Research Abstract |
本研究の目的は,スポーツ・看護・芸能領域の伝承場面における「わざ」習得に効果的に作用する修辞的な言語(「わざ」言語)の分析を通して,わざが習得されるメカニズムを解明し,同時に,有効な指導言語モデルを構築することにある。最終年度である今年度は,伝統芸能,スポーツ,および看護領域における卓越したパフォーマンスに接する人々から得られたデータの分析・整理を行い,専門図書として出版した。具体的には慶應義塾大学出版会より『わざ言語~感覚の共有を通しての「学び」へ~』の出版により成果を公表している。この中で,本研究で得られた知見として,伝統芸能,スポーツ,および看護の領域における「わざ言語」を関係性,身体性,日常性,行為性,表現性等の視点から検討を行った。あわせて,これまで実施した研究会の中で,実際に卓越的技能の指導に際し,ひゆ的な指導言語としての「わざ言語」が生起する文脈の分析と整理も行われた。教え学ぶ場における「わざ言語」を対象とした本研究を通し,(1)ひゆ的な言語がわざの収得に作用するメカニズム解明,および,(2)伝統芸能,スポーツ,看護領域の伝承現場で有効に作用する「わざ言語」による指導モデルの提案がなされた。本研究の成果としては,実際の指導現場における「わざ言語」の再確認と再認識が促進され,わざの伝承における指導言語の体系化に向けた手がかりを得ることが可能となった。本研究を土台とした新たな指導方法の提案がなされることが期待される。
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