Research Abstract |
本課題は, 統計力学や熱力学を基盤として自然科学の様々な分野で導出される非線形, 非平衡, 多種の数理モデルに対し, スケーリングや変分構造を用いて互いに関連付けて解析して, 爆発や界面など共通の現象を数学的に解明することを目指したものである. 本年度は最終年度であり, これまでに取り上げてきたいくつかのテーマを完成させるとともに, 新たな問題や解析方法も提出した. 特筆すべきものの第1は, 場と粒子に関わる双対的な変分構造のもとで保障される定常解の安定性についてである. 本年度は特に熱弾性記憶形状物質モデルでもこの原理が成り立つこと, さらに解析的非線形性の下では縮約汎関数の極小は無限小安定であることを証明した. 第2は多成分系の相互作用が及ぼす解の挙動である. すなわち, 腫瘍微小環境で現出する競合的走化性の下で1種のみがデルタ関数を形成すること(質量分離), 生態系モデルで解が時間とともに空間的一様な状態に遷移すること, 渦度が連続的に分布する点渦乱流平均場における逆温度の臨界値が存在することを, 厳密に解明した. 第3はスケーリングと爆発機構の量子化に関わるものである. 特に, 空間2次元のGel’fand方程式の多点爆発解において解の線形化非退化性がその爆発点を規定するハミルトニアンの臨界点の非退化性から導出されること, 高次元の退化放物型方程式において臨界指数の場合にタイプIIの爆発点が有限個であること, 空間2次元のSmoluchowski-Poisson方程式において, Dirichlet条件下では境界上の爆発点が存在しないことを証明した
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