Research Abstract |
本年度は,氷微惑星の初期進化において重要な高空隙率氷天体の衝突合体過程を調べた.熱進化による圧密焼結を想定して空隙率を70%から40%に変化させた雪試料を用いて衝突実験を行った.さらに,この雪試料の力学的強度を精密に求めるために定歪速度引張り変形実験を行い,それらの引張り強度の計測を行った.その結果,衝突速度30~490m/s,弾丸・標的質量比0.05~0.01において,衝突様式を4つに分類し,それらの領域の空隙率依存性を明らかにした.特に衝突合体領域は,弾丸・標的質量比く0.1でしか存在できないことがわかった.また,雪の引張り強度の計測では,引張強度は充填率の3.4乗に比例することが明らかになった.この結果を用いて衝突破壊のスケール則の改良を試みた.これらの実験に加えて,熱進化が進んだ岩石マントルー鉄コア模擬試料の衝突破壊強度の計測とマントルーコア間のエネルギー分配に関する研究を行った.その結果,シリケイトコア・高空隙率マントルの場合と同じく,鉄コアの破壊条件(Q_t:平均エネルギー密度)は,鉄の衝突破壊強度Q_<core>*とコア・マントル質量比R_<cm>を用いて,Q_t=Q_<core>*・R_<cm>^<-n>と表すことができることがわかった.しかしながら,nは1程度となりシリケイトコアの場合の2よりもかなり小さくなった.これは,鉄コアの場合,マントルによるコア保護機能があまり効かないことを意味している.最後に,熱進化が充分に進んだ天体の衝突再集積により形成されるラブルパイル天体の衝突破壊に関する実験を行った.特に,ラブルパイルの構成要素自身の破壊が及ぼす衝突破壊過程への影響を調べた.その結果,構成要素と弾丸のサイズが近い場合には,要素自身の破壊によりエネルギーが消費され,衝撃波の伝播が大きく妨げられることが分かった.従ってラブルパイル天体は,衝突破壊に際して容易に再集積が起こる可能性がある
|