2008 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯準二年振動が中高緯度の大気場・化学場の年々変動に及ぼす影響
Project/Area Number |
20340129
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
柴田 清孝 Japan, Meteorological Research Institute, 環境・応用気象研究部, 室長 (50354494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 友二 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (80343888)
山崎 孝治 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (70270791)
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Keywords | 赤道準二年振動 / 化学-気候モデル / 気候値長期ラン / 過去再現実験 / 火山性エーロゾル / 太陽11年周期 / オゾン層破壊物質 / Holton-Tan関係 |
Research Abstract |
化学-気候モデル(CCM)の長期ランを行った。季節変化が毎年同じの海面水温を使い、二酸化炭素ひような均質混合の温室効果気体やフロン等のオゾン層破壊物質濃度は一定、太陽放射も季節変化はするが太陽定数やスペクトル分布は一定の条件で化学-気候モデルを駆動するランと、過去25年程度の再現アンサンブルランである。後者は観測に基づく強制力{上記に加え、火山性エーロゾル、太陽紫外線11年周期変動}でCCMMを駆動した。 これらの長期ランを解析し、赤道準二年振動(QBO)が西風の時と東風の時で、北半球中高緯度の冬季の循環がどのように異なっているかを調べ、QBO西風時に東風時と比べ成層圏突然昇温の頻度が高く、極夜ジェットが強いという観測値から示されているHolton-Tanの関係(Holton and Tan,1980)が再現されているかを調べた。QBOの時間スケールは年のオーダなので、解析には月平均値が使われる例が多いが、日平均値の自己相関係数から独立な時間スケールを推定するより客観的な方法(Naito and Yoden,2005)を使った。モデルの系統誤差のため極渦の強度の指標、例えば北極の50hPaの温度の頻度分布は観測に比べ197K付近のピークの値は小さく尖度が小さいが、歪度は観測値に近い。QBOの位相による頻度分布の差は、観測値より小さいが、95%の統計的有意さでHolton-Tanの関係が成り立っていた。風の場ではQBO西風位相の時、西風の正の偏差が統計的に有意に対流圏にまで及んでいることも解析され、定性的に観測値とよく似ていることが示された。 惑星波の伝搬を表すEPフラックスをQBOの位相差(西-東)で描くと、亜熱帯の下部成層圏では赤道方向に向いているが、北緯30-60度の中緯度で上部対流圏から中部成層圏でEPフラックスの鉛直成分が気候値と反対の下を向いて、惑星波が赤道のQBOを感じ有意に変化し、観測値を再現しているがわかった。しかし、中緯度の惑星波の向きはこれまでの説明とは逆になっており、あらたな説明が必要なことを示している。
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