2009 Fiscal Year Annual Research Report
連続カチオン環化による多環式芳香族化合物の系統的合成法
Project/Area Number |
20350016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 淳士 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (70184611)
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Keywords | カルボカチオン / フルオロアルケン / Friedel-Crafts反応 / 縮合環 / S_N2'型反応 / ヘリセン / 分子内還化 / パラジウム触媒 |
Research Abstract |
電子不足な1,1-ジフルオロ-1-アルケンの求電子剤による活性化は、これまで超強酸の他にヨウ素、酢酸水銀(II)、塩化スズ(IV)を用いる手法が報告されているのみで、しかも活性化剤を等モル量以上必要とした。そこで筆者は、π-電子受容能の高い遷移金属錯体を用いれば、触媒量でも1,1-ジフルオロ-1-アルケンを求電子的に活性化できるものと考え、分子内にアリール求核部位を有する1,1-ジフルオロ-1-アルケンのFriedel-Crafts型環化を試みた。その結果、カチオン性パラジウム錯体[Pd(MeCN)_4](BF_4)_2が極めて有効であることを見出し、分子内環化生成物である環状ケトンとフルオロナフタレンの混合物を得た。ここではフッ素のα-カチオン安定化効果が働き、活性化されたフッ素のα位炭素をアリール基が選択的に求核攻撃し、環化が進行している。環化中間体から、β-フッ素脱離により生成するビニルフルオリドが反応処理時に加水分解を受けて二環式ケトンを与え、一方β-水素脱離とフッ化水素の脱離を経てフルオロナフタレンが生成したと考えられる。そこで、環化中間体からフッ化物イオンの脱離を促進させて環状ケトンのみを得るため、フッ素と親和性の高いBF_3・OEt_2を添加したところ、予期したように環状ケトンのみが選択的に生成した。同時に活性なカチオン性パラジウムが再生するため、再酸化剤を必要とせずに本環化反応の触媒化にも成功した。さらに、分子内に2つのアリール基を有するジフルオロアルケンを出発物質に用いると、いったん生じたビニルフルオリドが再度パラジウム錯体によって活性化され、ドミノFriedel-Crafts型環化が進行した。引き続き得られた環状化合物を脱水素することで、種々の置換基を有する四環式芳香族化合物、[4]ヘリセンへ誘導することができた。
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Research Products
(5 results)