Research Abstract |
平成20年度の解析から,らせん高分子であるポリペプチドが主鎖配向させなくても強誘電性を示すためには,ポリペプチド分子鎖が膜厚方向でコレステリック液晶状態の配向を取ることが有効であることが明らかとなっている。また,この強誘電性は側鎖エステル基の電場配向による誘起されている可能性が高い。そこで,平成21年度は,これらのより詳細な挙動を解析するとともに,低駆動電圧化等の観点から研究を遂行した。 具体的には,ポリ(メチルグルタメート)(PMG)より嵩高い側鎖を有するポリ(ベンジルグルタメート)(PBG)を用い,薄膜を作成して,その膜構造と側鎖緩和,ならびにFETとしての特性を評価,解析した。PBGはPMGと異なり,FETメモリ挙動は認められず,この原因として側鎖間相互作用がメチル基に比べ強いため,コレステリックライクな膜構造をとれず側鎖双極子の自由度が低下したためであることがAFM,XRD,熱分析,熱刺激脱分極電流(TSDC)測定結果より明らかとなった。FETメモリ特性を示すPMGにおいても,その相転移温度近辺で熱処理し,分子鎖間を密にパッキングすることでFETメモリ特性が消失することから,側鎖双極子の電場に対する応答自由度の大きさが重要な因子であることが証明された。 そこで,PBGにおいてもFETメモリ特性を発現させることを目的として,非晶質高分子であるPMMAを混合し,PBGの結晶化を下げる試みを行った。その結果FET特性が認められるようになり,種々の解析から非晶質PMMAがPBG鎖間の凝集を抑え,側鎖の運動自由度を保ったことが明らかとなった。すなわち,側鎖構造の制御がFET特性発現さらには低駆動電圧化にも有効であることが明らかとなった。
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