2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20390058
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
富澤 一仁 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40274287)
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Keywords | 糖尿病 / インスリン / Cdk5 / tRNA / 細胞内情報伝達 / 修飾酵素 |
Research Abstract |
CDKAL1は、遺伝子・ゲノム解析により発見された遺伝子であり、同遺伝子の翻訳蛋白質についての研究成果はこれまで全く報告がない。昨年度までの本研究で、CDKAL1が、tRNAの37番のアデニンをチオメチル化する酵素であることを突き止めた。また、膵β細胞特異的CDKAL1遺伝子欠損マウスの作製に成功した。今年度は、昨年度作製した膵β細胞特異的CDKAL1欠損マウスを用いて、以下のことを明らかにした。 (1)膵β細胞特異的CDKAL1ノックアウトマウスの耐糖能,インスリン分泌能について 2型糖尿病の典型的な症状として、耐糖機能の異常が挙げられる。CDKAL1欠損マウスの耐糖機能を検討するため、糖負荷試験を実施した。CDKAL1欠損マウスでは、空腹時血糖値は野生型マウスと同等であったが、糖負荷後の血糖値が野生型マウスと比較して有意に高かった。一方、同遺伝子欠損マウスのブドウ糖応答性インスリン分泌は、野生型マウ気より少なかった。 (3)膵β細胞特異的CDKAL1ノックアウトマウスに対する2型糖尿病を誘引する環境要因負荷と2型糖尿病発症についての検討 2型糖尿病は遺伝的要因及び環境的な要因の両方面に強く影響され、発症に至ると考えられている。そこでCDKAL1欠損マウスならびに野生型マウスに高脂肪食を5週間与え、耐糖能、インスリン分泌能ならびにERストレスについて検討した。CDKAL1欠損マウスは高脂肪食を摂取させると、空腹時血糖値が野生型マウスと比較して有意に高かった。すなわち、糖尿病を呈することが明らかになった。またブドウ糖負荷試験の結果、同遺伝子欠損マウスでは高脂肪食負荷により耐糖能異常が憎悪した。小胞体(ER)ストレス関連遺伝子の発現について検討した結果、CDKAL1欠損マウスでは、すべての関連遺伝子の発現の上昇が認められた。さらにこのマウスの膵島を単離し、β細胞のER構造について電子顕微鏡で観察したところ、ERの層構造が乱れ、膨張した像が観察された。以上の結果より、CDKAL1欠損マウスに高脂肪食負荷を与えると、ERストレスが引き起こされインスリン分泌が低下することが示唆された。
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