2009 Fiscal Year Annual Research Report
心筋組織修復・再生における幹細胞のダイナミクスと、サイトカインによる細胞運命制御
Project/Area Number |
20390069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤尾 慈 Osaka University, 薬学研究科, 教授 (20359839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 真貴子 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (70461168)
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Keywords | 心筋組織幹細胞 / サイトカイン / 血管内皮 / IL-6 / STAT3 / 心筋細胞 |
Research Abstract |
心筋組織の恒常性の維持には、心筋組織に存在する内因性の組織保護機構が重要な役割を担っている。本研究では、そのような組織保護機構のひとつである、IL-6ファミリーサイトカインの心筋組織修復・再生過程における意義を、組織内に存在する心筋細胞、血管系細胞、心筋組織幹細胞の細胞動態の観点から明らかにすることを目的とした。 IL-6ファミリーサイトカインは、シグナル伝達分子STAT3を活性化することにより、サイトカインの作用を発揮する。そこで、IL-6ファミリーサイトカインの心筋組織修復・再生過程における標的細胞を同定するために、各細胞特異的なSTAT3のコンディショナルノックアウト(CKO)マウスの作製を計画した。まず、最初に、心筋細胞特異的なプロモーターであるαミオシン重鎖(α-MHC)遺伝子プロモーターを用いてタモキシフェン誘導性に心筋細胞でSTAT3遺伝子を消去する系を確立した。次に、心筋特異的STAT3CKOマウスを用いて心筋梗塞を作製し、その後の心筋梗塞後病的リモデリングの程度を検討した。その結果、STAT3CKOマウスでは、STAT3野生型マウスと比して心拡大とともに心筋の線維化の亢進が認められた。逆に、α-MHC遺伝子プロモーターを用いて作製した心筋特異的活性型STAT3トランスジェニック(caSTAT3 TG)マウスにおいて心筋梗塞モデルを作製し、心筋梗塞後のリモデリングを検討したところ、caSTAT3 TGマウスでは、心筋組織の線維i化が抑制された。 以上のことから、心筋梗塞後の心筋組織修復・再生過程に、心筋細胞におけるSTAT3の活性化が必須であることが明らかになった。今後、心筋細胞におけるSTAT3活性化が、心筋組織幹細胞分化誘導にどのような影響を与えるかを検討する予定である。
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