2009 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品による胎児への致死的・重篤な有害事象の発現機序の究明
Project/Area Number |
20390157
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北田 光一 Chiba University, 医学部附属病院, 教授 (90110345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有吉 範高 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (00243957)
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Keywords | 胎児毒性 / 心臓停止 / DHEA-S / 遺伝子多型 / CYP3A7 / STS / 心機能とステロイド |
Research Abstract |
本研究の目的は、子宮熟化促進薬として本邦でのみ使用されているDHEA-S製剤が誘発する胎児突然死の原因を、胎児および胎盤の両面から探求することである。交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、胎児側の要因として、本年はまず、初年度に構築したCYP3A7のアミノ酸置換を伴う多型CYP3A7.2の発現酵素を用い、胎児組織の分化において重要な役割を担うall-trans retinoic acid(AtRA)の代謝に及ぼす影響を薬物速度論的手法で解析した。その結果、基質濃度-反応速度曲線(S-V plot)において、野生型酵素は典型的なMichaelis-Menten型の酵素反応を行うのに対し、CYP3A7.2は全く異なるSigmoid型のkineticsを示し、胎児血中における生理学的なAtRA濃度での代謝反応速度を計算した結果、野生型酵素の0.024%と極めて低い活性を示すことが明らかとなった。この結果はCYP3A7*2/*2を有しCYP3A7.2のみを発現する胎児では、正常な分化ができない可能性を示唆しているが、本研究で行った日本人における頻度解析からCYP3A7*2/*2を有する割合は2%未満であること、本研究で検討しているDHEA-S投与で心停止する胎児はみかけ上、正常に発育していることからCYP3A7*2/*2によるAtRA代謝不全が原因とは考えにくいが、ヘテロ接合体(CYP3A7*1/*2)を有する胎児がin vivoにおいてAtRA代謝が遅延することにより、循環器系の分化に影響を及ぼしている可能性は否定できない。 一方、胎盤側の要因の検討において、当初計画では正常産褥時に娩出後は廃棄されている胎盤を用いる予定であったが、DHEA-S製剤による胎児毒性の発生件数が稀なことから、原因を探るためには極めて多数の胎盤を採取し、酵素活性・mRNAの定量を行うため、解析まで-80℃で保管する必要があるが、当初予定していた保管スペースが確保できなかったこと、同意取得方法の是非について要検討となったため、研究実施計画に基づきSTS遺伝子多型探索を行った。約100名の日本人検体の解析を行ったところ7種類の多型を見出し、そのうち6種類は新規のものであった。
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Research Products
(2 results)