2008 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的適所における造血幹細胞分裂の分子基盤の解明
Project/Area Number |
20390270
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高倉 伸幸 Osaka University, 微生物病研究所, 教授 (80291954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 将也 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20334766)
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Keywords | 幹細胞 / 発生分化 / 自己複製 / ニッチ / 再生医学 |
Research Abstract |
幹細胞と前駆細胞の細胞周期の相違についての分子機序は現在不明である。この相違を明らかにすることは、幹細胞特有に利用される細胞周期の分子機序の解明につながると考えられる。従来我々は、造血幹細胞の自己複製が制御されると考えられる血管領域(血管ニッチ)の、造血と血管形成の両者に必須の分子であるTie2受容体に注目し、Tie2の下流分子の解析から、分裂酵母でDNA複製に必須とされてきたPSF1のマウス相同遺伝子を単離して、本分子が造血幹細胞の細胞分裂において必須の役割を果たし、また、別の遺伝子として、細胞周期の遅延化にgalactose binding lectin-3(Galectin-3)が関わることを解明し得た。本年度我々はPSF1の発現制御についての解析を、精巣におけるspermatogonia(精子幹細胞)とそれより分化しているが増殖能力を有するspermatocyte(精母細胞)を幹細胞-前駆細胞のモデルとして行った。PSF1は蛋白レベルでは精子幹細胞に特異的に観察され、精母細胞には発現していない。しかし、in situ hybridizationの結果、mRNAレベルでは両者に発現していることが判明した。精母細胞ではPSF1遺伝子からPSF1蛋白が産生されても早期に変性をうけて消失するのではないかと予想し、PSF1の転写開始点を5'レース法、5'Cap法により解析した。その結果、精母細胞では完全長ではない短いPSF1のmRNAが転写されていることが判明した。この短いRNAからはPSF1のN末端が欠損した不完全な変性を受けやすいPSF1蛋白が産生されることが予想され、これが精母細胞でのmRNAと蛋白発現の解離をもたらしていると考えられた。前駆細胞は、幹細胞と異なり細胞増殖に限界があり、この制御がDNA複製因子の発現調節により営まれていることが示唆された。
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Research Products
(18 results)