2008 Fiscal Year Annual Research Report
縫線核5-HT/GABA共存ニューロンの発現・発達に及ぼす幼若期ストレスの影響
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20390309
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉岡 充弘 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 教授 (40182729)
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Keywords | セロトニン / 発達 / ストレス / 縫線核 / GABA / 海馬 / 内側前頭前野 |
Research Abstract |
出生後から成熟期までのセロトニン(5-HT)含有細胞の発生学的情報を免疫組織学的手法によって収集した。出生後3週時に5-HT陽性細胞の数がピークを迎え、その後徐々に減少していくことが分かった。また、多くの5-HT陽性細胞は同時にGABAを包含していることをin situレベルで確認した。すなわち、GABAのマーカーとしてparvalbumine(PA)を用いてきたが、5-HT陽性細胞は5-HT transporterおよび5-HTの合成酵素であるtryptophan hydroxylaseを共に発現しており、縫線核PA陽性細胞はGABA合成酵素であるGAD67のmRNAを発現していることを明らかにした。つまり、5-HTとPAを共発現している細胞はGAD67mRNAを発現しており、GABA/5-HTの共存細胞であることが確認できた。さらに、縫線核群におけるGABA/5-HTの共存細胞の生後の経時的変化も明らかにした。すなわち、生後2週までは共存細胞は発現しておらず、生後4週齢で最高数に達し、6週以降急激に減少するのである。また、縫線核群の投射先である海馬および内側前頭前野ではGABAおよび5-HTのtransporterの共発現は認められなかった。このことは投射先でGABA/5HTを同時に遊離しているのではないことを示唆するものである。5-HT神経系が完成する生後3週齢時に電撃ストレスを負荷すると成熟後も縫線核の5-HT/PA陽性細胞が減少するが、ストレス負荷直後より、5-HT選択的再取り込み阻害薬を連続投与することにより、この細胞数の減少を抑制することができた。今後この共存神経の機能解析を遂行することにより、5-HT系GABA系相互調節機構の解明のみならずストレス応答異常を基盤とする様々な精神疾患の病態解明および新たな治療法への端緒となることが期待される。
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