Research Abstract |
情動に関わっている背側縫線核(DRN)におけるセロトニン(5-HT)含有神経細胞の多くがGABAを含有している.これら古典的な神経伝達物質が共存する意義やその役割・機能は全く明らかになっていない.そこでこの共存神経細胞の機能解析と,発達,幼若期におけるストレスの影響を検討した.5-HT合成酵素であるTPH2とGABA合成酵素であるGAD67のそれぞれのmRNAの発現解析を行った.TPH2 mRNAはDRNのlateral wing,dorsal parts,ventral partsに強く発現しており,また正中縫線核(median raphe nucleus:MRN),線状核(B9 parts)にも発現していた.GAD67 mRNAはDRNのmidline,dorsal partsおよびventral partsには発現しておらず,lateral wingおよび,縫線核外につよく発現していた.TPH2 mRNAおよびGAD67 mRNAは細胞核の周辺に発現しており,細胞質に存在している,一部,TPH2 mRNAとGAD67 mRNAは同一の1つの細胞に存在していた,つまりDRNのlateral wingには,TPH2 mRNAとGAD67 mRNAの共存ニューロンが存在することが確認された. またこの初見は,single-cell RT-PCR法によっても確認された,解析した全ニューロンに対する割合はそれぞれTPH2単独陽性ニューロンが55.3%(21/38cells),TPH2およびGAD67両陽性ニューロンが21.1%(8/28 cells)であった.加えて,5-HT/GAD67ニューロンは,神経伝達物質GABAのシナプス間隙への遊離に必要なVIAATのmRNAが検出されなかった.また,DRNからの5-HTergic neuronの投射先である,内側前頭前野,後内側腹側核およびDRN内での5-HTnegic neuron終末では,HTTとVIAATのタンパク共発現は認められなかった.電気生理学的解析では,5-HT/GAD67ニューロン,5-HTニューロンのAP amplitudeの数値はそれぞれ,73.21±3.45mV,84.51±2.13mVであり,5-HT/GAD67ニューロンのAP amplitudeが有意に小さい値を示した(Student's t-test,F1,27=0.22,P<0.05).他のパラメーターには差は認められなかった.さらに,currentを段階的にinjectionした時のmembrane resistanceはそれぞれ,9.86±1.32 MΩ,16.10±1.99 MΩであり,5-HT/GAD67ニューロンの膜抵抗値が有意に低い値を示した(two-way ANOVA,F 1,27=42.21,P<0.05).またそれぞれのニューロンのfiring frequencyは,いずれの強度のinjection currentにおいても,5-HT/GAD67ニューロンが5-HTニューロンに比較して,有意に低い値を示した(two-way ANOVA,F 1, 27=24.33, P<0.05).
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