Research Abstract |
研究を始めるに当たり,内外の文献を収集し,検討を行った.この研究を開始した時期とほぼ一致して,厚生労働省から看護師による薬剤量調整等,従来は医師の業務と見なされてきた行為を看護師が行うことを奨励する通達がなされたり,実際にナースプラクティショナーの養成が,一部施設で開始されるなど,現実の動きが先行するような傾向も見られた.検討の結果,まず,わが国の現行法下でも,看護師の裁量権の拡大は相当程度可能と思われた.特に地域医療と高度医療の分野で現状を追認するような形で看護師の裁量権の拡大が進んでいた.また現状では,予想されるような医師の側からの組織だった反対はほとんどみられず,むしろ,医師が医師にしかできない業務に特化するにあたり,積極的に看護職の裁量権拡大を望む論調が多くみられた.次に,A県訪問看護ステーション6ヶ所10名の訪問看護師に医師と訪問看護師の裁量権に関係する役割拡大につながる訪問看護師の活動内容について,フォーカスグループインタビューを行い,内容の抽出を行った.役割拡大につながる日々の訪問看護師の活動として,「医療機器の管理」「ターミナル期の疼痛緩和」「死亡確認」「下剤の調整」「デブリートマンなど褥瘡処置」「酸素流量の調節」「輸液の実施」「食事量に応じたインスリン量の調節」「排尿・便ケア」「胃チューブの交換」「肺理学療法・排痰法」「気管カニューレの管理」「人工呼吸器の管理」「輸血管理」があげられ,また,これらの活動は利用者の病状の安定性が影響していると考えられた.また,医師との信頼関係,利用者・家族との信頼関係のもと,これらの活動を展開しており,また主治医から必ず返事がくる体制を構築していた.医師との信頼関係形成については,訪問看護師は成功事例の実績を作り,看護はここまでできるという理解を医師に深めていくアプローチを行っていることが判明した.
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