2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国内蒙古における土地条件の劣化プロセスと農牧民による環境利用形態の変容
Project/Area Number |
20401005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大月 義徳 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (00272013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 良平 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 助教 (90333781)
境田 清隆 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 教授 (10133927)
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Keywords | 中国 / 内蒙古 / 土地条件劣化 / 沙漠化 / 環境地理学 |
Research Abstract |
呼和浩特市武川県地域において、定点ピンを基準としたガリー後退量の計測、気象・地温・土壌水分データの取得、固定カメラによる砂塵暴生起記録、土地利用の変化等を把握・実施した。また都市近郊を中心に展開し始めた酪農業の地域的類型化の作業を実施し、その一類型である都市近郊の生態移民による集団酪農について、土黙特左旗において酪農民を対象とした聞き取り調査を行った。上記データに基づき、武川県地域のガリー壁の後退は、各年暖候季の初回に近い降雨イベントであれば、平均降雨強度1~2mm/hr内外、継続時間10時間程度の降雨によっても引き起こされる可能性を指摘した。これは季節凍土の発現・消失に伴い、春季以降、ガリー壁付近の地盤が脆弱化し、地表流等の集中箇所で選択的にガリー浸蝕が発生していることに因ると推察した。 内蒙古西部、鳥海市・阿拉善左旗境界の鳥蘭布和沙漠縁辺にては、沙地前縁に位置する回族集落調査を行い、近年における農牧家の生活形態変化と家計状況把握を目指した。地形・表層地質調査、および農牧家からの聞き取り調査等に基づき、完新世前期(約8ka)以降、1950年代以降、および1980年代以降の沙地前面の最大移動速度はいずれも1m/yr内外に及ぶことが明らかにした。こうした土地条件下で、黄河河岸直近に限定される農耕地の集中的利用により、とくに農産物を少品種に特化させ、化学肥料投入による連作に頼るなどにより、地力低下および土壌塩性化が生じ耕作放棄地が増加する傾向にある点など、現在の問題点が浮上した。 内蒙古中部、渾善達克沙地沙地を含む広域的範囲において衛星データの解析を継続し、植生指標の経年変化を詳細に明らかにした。併せて植生地理学的視点においても、渾善達克沙地から北部高原地帯にかけて、年間降水量勾配に沿う人為的攪乱、とくに農耕や牧畜による変化、および草原植生劣化の実態を調査し、相互のかかわりを把握した。
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