Research Abstract |
アメリカの博物館・美術館ならびに民間等に収蔵される「中国書跡(中国人が書いた書道作品)」と「日本書跡(日本人が書いた書道作品)」の基礎データの収集と整理を行い,将来的な網羅的データベース化に向けての基盤を構築することを目的とし,そのための調査研究を行う。 日本の伝統文化の一つである書道は,東アジアの一国としての日本が世界各国地域と連携を深める上で,国際性と地域性を有する重要な歴史的淵源と芸術的創造力をもっている。その証左として,アメリカ,中国(台湾,香港,マカオを含む),日本の研究機関ならびに民間において,「中国書跡」と「日本書跡」が数多く収蔵されている。なかでもアメリカにおけるその収蔵状況,研究状況を調査し,整理し,把握し,基盤を整備することは,日中米の芸術文化交流に繋がり,将来の日本の書道文化の継承発展のみならず,伝統文化自体のあり方を模索することに繋がると考える。 本研究は,書道文化の国際性と地域性を学術的に評価するための基盤研究であり,かつ日本の書道文化の継承発展にとって非常に重要な研究であり,先人がほとんど未着手の研究領域である。 中国絵画の分野では,鈴木敬編『中国絵画総合図録』第1巻~第5巻,東京大学出版会,1982~1983および戸田禎佑・小川裕充編『中国絵画総合図録』続編第1巻~第4巻,東京大学出版会,1998~2001が研究報告書として刊行されており,すでに欧米における絵画作品の収蔵状況は明らかにされている。しかし「書跡」の収蔵状況は,中田勇次郎/傅申編『歐米収藏中國法書名蹟集』全四巻,中央公論社刊1981および同編『歐米収藏中國法書名蹟集(明清篇)』全二巻,中央公論社刊1983の二書が30年前に刊行されて以降,収蔵状況が不明である。 よって本調査研究によって,少なくともアメリカの博物館・美術館における収蔵状況を再調査し体系化することが可能である。 「中国書跡」と「日本書跡」の基礎データの収集と整理を行うためには,各博物館・美術館に収蔵される重要な書跡と,それに関するカタログ(展覧会図録)および論文(カタログに引用される文章,一般刊行物およびその他)の収集と整理が必要である。事前にこれらの刊行物を収集しながら基礎データの整理を行う。 最終的には,収集整理したデータをもとに「基礎データ台帳」を作成して、アメリカの博物館・美術館等に収蔵される「中国書跡」と「日本書跡」の実情の一端を明らかする。
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