2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポータブルX線分析装置の開発と遺跡出土遺物の物質史分析による東西文化交流の解明
Project/Area Number |
20404005
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部・応用化学科, 教授 (90155648)
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Keywords | 考古化学 / ガラス / 蛍光X線分析 / 非破壊分析 / 海のシルクロード / 東西交流 / オンサイト分析 / 美術史 |
Research Abstract |
本年度は、複数の大きな進展があった。まず、海外調査ではシリアのQatna, Tell el Fakhariya Tel Halafの3カ所、3つのドイツ発掘調査隊に参加し遺跡出土遺物の分析ができたことである。その結果、ガラスの起源に近いシリアでBC15世紀のペンダントビーズや、各調査隊の国宝クラスの多数の出土遺物の分析ができた。次に、トルコのビュクリュ・カレから出土した2点のガラスを分析し、いずれもメソポタミアのガラスで、しかもQatnaで分析した試料と同系のものであることが判明し、メソポタミアからトルコへの東西交流を実証できた。3番目は、平等院鳳凰堂の国宝阿弥陀如来座像の台座からみつかった、500点余りのガラスを分析することができたことである。その結果、奈良時代に特徴的な鉛ガラスと、中国の唐の時代に流通したカリ鉛ガラスであることが判明した。前者は、正倉院御物のガラスビーズと組成的にも様式的にも似ていて、本成果は、新聞各紙で大きく報道された。本発見により、前年度の熊本県、今年度の岡山県の弥生時代、古墳時代のガラスビーズの分析によって明らかになった古代日本のガラスの組成的変遷の解明に続く、奈良から平安時代のガラスの変遷に光りをあてることができた。特に、後者はこれまで未解明の部分が多くその意義は大きい。4番目は中国の石家庄で、北魏の孝文帝の石棺から出土したガラスの分析をすることができた点である。分析の結果、植物灰ガラスで西アジアの組成で、本研究のテーマであるガラスの東西文化交流の貴重な実証データが得られた。5番目は、インドのデリー近郊で、日本の熊本県の古墳出土のガラスビーズと組成、形状が酷似したインドのビーズの分析を行うことができた点である。これらの成果は、2011年4月末にベルリンで開催されるTECHNART2011で、日本とアジアとのガラスの東西交流として、また、シリアの成果についてもいずれも口頭で発表する。さらに、投稿論文としてまとめ本年度の目標を120%達成できる成果を得た。
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Research Products
(39 results)