2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイオエタノール原料作物として,ヤシの生産能力を再評価する
Project/Area Number |
20405017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 雄佐 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (80122919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 貞二 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (70155844)
新田 洋司 茨城大学, 農学部, 教授 (60228252)
中村 聡 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00289729)
渡邉 学 岩手大学, 農学部, 助教 (00361048)
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Keywords | サッカー / サゴヤシ / デンプン生産 / 糖生産 / ニッパヤシ / バイオマス |
Research Abstract |
ヤシ類による糖とデンプンの生産,またその管理について把握するために,2011年6月16日から6月27日までと9月29日から10月8日まで,マレーシア,ボルネオ島のサラワク州で調査を行った. 1.ニッパヤシ:糖を採るニッパヤシについては花枝からの樹液採取に関する調査を行った。6月18-20日にサラワク州クチン市郊外のサマラハン川河口近く,ニッパヤシが優先するマングローブ林内で,夜間-午前-午後-夜間の4つの連続した時間帯それぞれで燻蒸した竹筒を用いて溢泌液を採集した.また,それぞれの時間帯の境に花茎から直接溢泌液を採取し,帰国後,糖の分析を行った.直接採取した溢泌液の糖はスクロースが主でフルクトースやグルコースはごくわずかだった.また,日中,特に午後は夜間に比べて糖の生産能力が低下し,夜間の方が糖生産に有利であることがわかった。これは,現地では夜間に糖液を採取し,日中にそれを煮詰めてニッパヤシ糖を生産しているが,日中には採液しないことの一面を裏付けていると考えられる.花茎1本による1晩(16時間)の糖生産量は平均138gであった. 2.サゴヤシ:デンプン原料作物であるサゴヤシについてはバイオマス生産に関して継続調査できるように,三年前にサラワク州ムカ近郊のサゴ農園内に設定した圃場で,6月22-24日と9月2-6日に,生育状況とそれまでの管理について調べた.サゴヤシの生育調査ではサッカーの成長量を調べ,帰国後,生長を解析した.その結果,主茎となるサッカーの幹立ちが近づき,全体としては匍匐成長が鈍っているが,個々には,幹立ち直前まで,今までと同程度の伸長速度を保つことがわかった。植え付けから幹立ちまでの期間が大まかに把握でき,造園に要する期間を推定できる見込みが立った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までの研究で,糖やデンプンの原料となり得るヤシ科植物を32種抽出することができた.ただし,糖の場合は採液にコストがかかり,デンプンの場合はその収穫できる年数がつかめないことなどにより,バイオエタノール原料となり得るかに疑問が生じた.その中で,糖生産ならばニッパヤシが,デンプン生産ならばサゴヤシが最も可能性があると考え,2種に絞り込んで,バイオエタノール原料となり得るかどうかを判断するために不明な点を解析している.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように,糖生産ならばニッパヤシが,デンプン生産ならばサゴヤシが,問題解決に近く,バイオエタノール原料植物となりえる可能性が高いことがわかった.ただ,野生植物であるニッパヤシでは糖生産に関連する基礎的な知見が不足し,またサゴヤシでは永続的に収穫し続けるための分枝の成長制御の知見が不足し,生産性を把握しきれていない.そこで,バイオエタノール原料植物としての位置付けを確定するために,この2点を究明することが今後の研究推進方策である.
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Research Products
(2 results)