2010 Fiscal Year Annual Research Report
楽器演奏による長期的訓練が指の独立的運動機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
20500504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 博 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60161535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 朋子 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (50433412)
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Keywords | 指 / 独立性 / 運動機能 / 高次脳機能 / 長期訓練 / 楽器 |
Research Abstract |
本研究では3年間でピアニストとバイオリニストおよび非音楽家(一般人)を対象に、左右の手指の長期的運動・感覚訓練がもたらす指の運動機能の独立性について明らかにすることを目的とした。20年度は、実験装置の作成と予備実験を実施し、一般人を対象にデータを収集し、個々の指の独立性機能を評価するためのMatlabプログラムを作成した。21年度は、それを使用して一般人データ解析を実施した。また、ピアニストのデータ収集・解析も行なった。22年度はバイオリニスト(12名)のデータを収集し、その解析を実施した。その結果、一般人、音楽家共に左右の手での独立性を示す係数が母指、示指、小指、中指、環指の順に低くなることが明らかとなった。また、他指の運動に付随する従属性係数でも類似する結果が認められた。動的な結果と静的な結果では、どちらの手においても、動的な独立性よりも静的な力発揮での独立性機能の方が顕著に高かった。運動速度が速い場合(3Hz)の方が遅い場合(1Hz)よりも独立性が低くなった。ピアニストおよびバイオリニストでは、右手において一般人よりも中、環、小指での独立性が高く、左手でも類似する結果であった。ピアニストとバイオリニストとの比較では、右手の独立性の平均値がピアニストの方が高かったが、統計的には有意な差とはならなかった。12名のバイオリニストの半数は、ピアノ訓練経験を有しており、それが影響したものと推察された。本研究の結果、楽器の演奏に伴う長期的な訓練は、顕著に指の独立的運動機能を高めること、特に環・小指での動的な機能向上が顕著となることが明らかとなった。個々の指の独立的運動機能が中枢の機能を強く反映することを考慮に入れると、これらの結果は、熟練音楽家の大脳皮質における指の運動・感覚野領域の解剖学的拡大に関するいくつかの先行研究の結果と一致するものと言える。
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