2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500680
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Research Institution | Wakayama Shin-ai Women's Junior College |
Principal Investigator |
千森 督子 和歌山信愛女子短期大学, 生活文化学科, 教授 (40290449)
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Keywords | 住生活 / 民家 |
Research Abstract |
本研究の目的は、紀伊半島南部の民家の特性と変容を住生活的視点から解明することである。その内容は、(1)平面構成を通して住生活の特性と変化を明らかにする、2)紀伊半島の特徴的か自然風土条件である、台風時や横殴りに降る風雨から家屋を守るための、建物の特性と変容を明らかにするの二つから成る。 平成22年度は、三重県南牟婁郡、熊野市を対象地域とした。目的に従い調査を実施し、資料管理、考察を終えている。研究成果で特筆すべきは(1)では、主屋の大半が平入であるが熊野市育成町、神川町、五郷町で妻入りが数軒確認された。平面構成は土間と床上部分から成り、4種類に分類できる。平面構成の主流は、「前土間カッテ張り出し型」であり、約半数の家屋がこの型に属している。しかし、熊野市育成町ではこの型はみられず、「前土間四間取り型」と「通路L型土間カッテ後列張り出し型」が確認できた。「前土間四間取り型」は昨年の調査では確認されなかった間取り形式である。また「通路L型土間カッテ後列張り出し型」は、熊野市育成町でのみみられた。一方、志摩・熊野灘沿岸に分布する三重県の間取り形式である「志摩III型」は、調査地域では南牟婁郡御浜町で確認された。 後列下手室の背面には「チュウジキ」と呼ぶ窓下収納空間が多くの家屋で設けられていた。穀物を備蓄するイモツボは、縁下にある事例が多く、土間の狭さとの関係性が考えられる。竈と流しの位置関係の組合せは「竈が床上・流しも床上」が最も多い。 (2)に関しては、屋敷や建物を守るために、敷地の多くは石垣がめぐらされている。防風雨装置としては雨除け板が設けられ、軒下にほぼ鉛直に付く板囲いと、傾斜をつけて軒の長さを伸ばす庇に大別される。板囲いには、妻壁を覆うガンギと、平側に設けられるマエイタがある。とりわけ、ガンギは、すべての主屋と約8割の納屋で確認できた。板囲いや庇を石垣の上に被せ、雨除けとする家屋も多く、これらの場合、軒下空間は物置としても活用される。雨除け板は、伝統的に木製であったが現在では腐朽しにくいトタンである。また、アルミサッシ戸の普及により、さらに近年の台風通過の減少から、これら装置の必要性は少なくなっている。
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Research Products
(4 results)