Research Abstract |
平成23年度は,インターネット調査における1次調査(母子の食態度,日常行動)と2次調査(母親の日常の食事)の詳細な分析とそれらの知見に基づく栄養・保健指導における適応の検討であった. まず,1次調査から,現在の育児充実感を従属変数とした要求授乳に関するSEMのモデルを検討した.その結果,子どもの痩身への期待が低いと要求授乳となり,子どもの痩身への期待の低さの背景として母親自身の痩身願望の低さ,BMIの低さが認められた.一方,BMIは子どもの痩身への期待にも直接的に影響を与えており,母親のBMIが高いほど子どもの痩身への期待が低かった.要求授乳が直接的に影響を与えた変数は育児充実感の強さと子どものやることを口出しせずにやらせているとする母親の行動であり,そのような母親の行動が子どもの笑顔の多さと育児充実感の強さに影響を与えていた. 次に1,2次調査から,母親の食事バランス6分類と体型・食態度に関する変数の関連を検討した.食事バランス6分類の摂取と各尺度との間にみられた関連性は主食と抑制摂食・やせ願望,副菜と偏食,主菜と外食頻度,牛乳・乳製品と偏食,果物と情動摂食であった.また,母親と夫の学歴,世帯年収は,主に副菜,主菜,牛乳・乳製品,果物の摂取と関連した.これらのことから,実際の食事と関連する要因の心理・社会的要因の多様性が示唆された. 従来の保健現場における授乳指導は,子どもの授乳量や母乳の分泌および授乳時の体位などの実践的な側面に焦点化される.しかしながら,本研究で得られた知見,すなわち母親の授乳スタイルのあり方が1)母親の体型や痩身意識の要因と2)母子関係の要因の両方が関係するということに基づいて,栄養・保健指導現場での授乳指導において母親の授乳スタイルに注目し,母親による子どもの要求の読み取りに重点を置くことが長期的な母子の新たなる支援となる可能性があることが提案された.
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