Research Abstract |
教員にとっても利用可能なシステム開発を目指して,2009年4月から2010年3月まで,東京農工大学の教員を対象に14回の授業観察を行い,理系大学における基礎教育の指導法についてのデータ収集を行った.このような授業を学内・学外の参観者に見せ合う「授業公開」は,高等教育においても,授業改善ための情報共有や議論の場として期待が寄せられている.本研究では,授業風景をビデオに収録および再生を行いながら手書きでコメントを加えて,授業観察を行えるシステム(FD Commons)を開発し,工学部の1科目を対象に教育歴および専門が異なる複数の4名の評価者により,3回の試用実験を行った.さらに,これらの事例を,複数の教員間で共有し,再利用するための「eポートフォリオ」のデザインを行い,学内に情報共有サイトを立ち上げた.このような取り組みについて他大学の研究者との情報交換も行っている. 分野を超えた教師連携を可能とするための評価指標の抽出,および授業改善のための「eポートフォリオ」のためのシステム構築にむけた開発および調査をすすめている.そのためには,本システムを利用した授業観察プロジェクトへの参加者を募るとともに,利用者からの意見を取り入れたシステム改良を行っていく.今後は,FD Commonsを利用した授業観察支援をきっかけに,個々の教員,学科,部局の合意形成に基づいた自発的FDの実現に向けてのボトムアップ支援,および大学授業を対象とした教育研究をすすめていく予定である.このシステムについては,専門の異なる観察者によって使用実験を重ね,より効果的な授業改善ツールとしての利用法を探りたいと考えている.
|