Research Abstract |
世界に事例のない「ガス状ホウ素化合物による植物被害」が発生し,急遽開発した測定法は,煙道外排ガス採取法(2形方式)のため,バラツキが大きかった。そこで,当基盤研究C(平成17年度から3年間)で,煙道内でアルカリ含浸ろ紙等に捕集する煙道内排ガス採取法(1形方式)を開発した。これは煙道内で捕集するため,排ガス温度や分圧等の影響が全くなく,昇華性を有するガス状ホウ素化合物の測定に高い分析精度が得られた。一方,工場の排出ガスには,有害ガス(硫黄酸化物(SOx),窒素酸化物(NOx)等)を法律上測定する義務があり,各工場では,別途,項目毎に測定している。このアルカリ含浸ろ紙は,常温ではガス状ホウ素化合物以外に,酸性有害ガスの捕集が考えられるため,工場の排出ガス中のガス状ホウ素化合物とSOxの同時測定を検討した。 しかしながら,実測してみると,180℃程の高温では捕集用アルカリ含浸ろ紙が6段でも全量を捕集することが出来ないこと,つまり,酸化剤が無いとSOxが完全に捕集出来ないことが判明した。そこで,酸化剤とアルカリ捕集材を兼ねた含浸ろ紙や,酸化剤又は酸化触媒+含浸ろ紙等,計9種類の含浸ろ紙について検討を行った。その結果,過酸化ナトリウム含浸ろ紙のみが,SOx+ガス状ホウ素化合物の同時捕集が可能であることが明らかとなった。 そこで今回は,捕集材に酸化剤とアルカリ性の両方の特徴を持った過酸化ナトリウム含浸石英繊維ろ紙を用い,これを1形方式小型採取器にセットし,工場の排出ガス中のSOxとガス状ホウ素化合物の同時測定法の開発を目的として検討を行った。その結果,SOxとガス状ホウ素化合物の同時測定が,十分に可能であることが明らかとなった。
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