2010 Fiscal Year Annual Research Report
カンキツ類花器におけるカフェイン合成能と虫媒の関係の分子生物学的解釈
Project/Area Number |
20510201
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
水野 幸一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (30302376)
|
Keywords | カフェイン / カンキツ類 / メチルトランスフェラーゼ |
Research Abstract |
カフェインは特定の植物種に見られる二次代謝産物であり、カンキツ類では花器特異的に存在するとの報告がある。その合成を司る酵素遺伝子は、コーヒーやチャで単離・機能解析が進められており、植物の生長制御に関わる化合物のメチル化を行なう酵素と類似の構造を有する一群(モチーフB'-メチルトランスフェラーゼファミリー(B'-MTs))を形成していることが明らかとなっている。カンキツ類では酵素遺伝子がこれまで不明のままであったが、我々はこれらにおいてもB'-MTsに属する酵素が関与していると仮定し、スダチを材料にCS遺伝子の単離と機能解析をめざした。これまでの3種類(CitMT1、CitMT2およびCitMT3と命名)に加え、新たに3種類のCS候補遺伝子(CitMT4、CitMT5およびCitMT6と命名)について調べた。このうちCitMT5は、アミノ末端側から5番目のアミノ酸残基がリジンのタイプとスレオニンのタイプの二種類が得られ、そのうちリジンのタイプのみがジャスモン酸をメチル化してジャスモン酸メチルを生成する、メチルエステル化活性を持つことが判明した。1アミノ酸残基の違いによって活性の有無が見られたことから、これらの酵素の立体構造予測を行ったところ、当該アミノ酸残基は基質結合部位の入口付近に位置し、トレオニンの場合基質が基質結合部位に入るのを妨げる構造を取るとの予測を得た。一方、カンキツ類ESTデータベースからのin silicoスクリーニングではカフェイン合成に関わるものは見いだせなかったことから、カフェインが含まれていることが確認されている、レモンのつぼみ由来のcDNAライブラリーを新たに調製し、それを用いたスクリーニングを開始した。その結果、これまでに解析した遺伝子とともに新規のB'-MTs酵素遺伝子を見いだした。今後、大腸菌発現系を用いてそれらの機能を調べる予定である。
|