2010 Fiscal Year Annual Research Report
神・仏観念の共存と相互排除をめぐる倫理思想史的研究――超越観念の再規定の試み――
Project/Area Number |
20520019
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 准教授 (00263624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊澤 一 山口大学, 人文学部, 教授 (10155591)
上原 雅文 東亜大学, 人間科学部, 教授 (30330723)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
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Keywords | 神・仏・天 / 近世庶民仏教思想 / 『今昔物語集』天竺部 |
Research Abstract |
本年度は、研究代表者・分担者が各自担当に従い、神仏関係文献に関する個別的研究を行うとともに、佐藤正英氏(東京大学名誉教授)を招き2回の研究会を開催、各自研究の報告と討議、共通課題である八幡信仰関連文献の読解を行った。とくに『八幡宇佐宮御託宣集』については、思想解明の基礎作業とすべく年表作成に取り組み、目下およそ半分の巻の作成を終え修正・拡充中である。各自担当については以下の通りである。 1.代表者・柏木は、『今昔物語集』天竺部釈迦仏関連説話の読解を継続し、天(神)との関係・対比を意識しつつ仏観念の特質を検討、結果を論文1本にまとめた。説話の描く仏の神通力が、一方で仏の智慧・慈悲の具現であり、他方で仏の肉身性に対する人々の憧憬の投影であることを考察した。 2.分担者・豊澤は、引き続き、戦国時代から近世にかけての武士道関係文献(『甲陽軍鑑』『三河物語』『葉隠』等)を読解し、「天(天命・天道)」「運命」等の超越観念に焦点を定め、神・仏共存的な世界観について考察を深めた。その成果を、中世神道思想や近世儒学思想をめぐる従来の研究成果とあわせ、著書1冊として公刊した。 3.分担者・上原は、『日本書紀』欽明天皇~推古天皇までの「仏法伝来説話」と、『元興寺伽藍縁起』とを詳細に読み解き、仏法受容の過程における、神信仰原理の機能の様態を考察した。さらにそれを『今昔物語集』震旦部冒頭(巻六1~10)と比較し、仏法受容時の神仏関係について、日本独自の原理を浮彫にしつつある。 4.分担者・吉田は、近世庶民における神仏混淆思想について、通説化している和辻思想史図式を批判的かつ具体的に乗り越える作業を行い、考察結果の半分を論文1本として発表した。神仏混淆思想の基盤に近世特有の「擬制としての親族共同体」の観念があり、その根源には特殊な「この」因縁の直観があることを明らかにした。また4件の研究会発表を行った。
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