2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520022
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 勉 Kumamoto University, 文学部, 教授 (50117339)
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Keywords | 不合理 / 価値 / 目的 / 合理性 / アリストテレス / グライス / アクラシア / 反自然主義 |
Research Abstract |
本研究は、アクラシア(意志の弱さ)という現象を含む人間の不合理性・愚かさ・弱さについて、感情と欲求、目的と価値、合理性と規範性という人間をめぐる基本的な問題との関連性ついて仔細に検討しながら、社会学的、精神医学的、及び脳神経学的視点からも広く受け入れられるような、一般的・総合的な説明を与えることを目指すものである。 本年度は、まず、ポール・グライスの反自然主義的、構成主義的な考え方について、グライス自身の行為論の観点から理解を深めるとともに、合理性と規範性に関する反自然主義的構成主義と、価値に関する実在論の両立可能性について、明確にすることを目指した。その成果の一端は、グライスの講義録の拙訳「目的と幸福に関する考察」に示した。 第二に、合理性と規範性をめぐる近年の議論の整理を進めると同時に、合理性と規範性に反すると考えられるアクラシア(意志の弱さ)というごくありふれた現象を、構成主義の立場からどのように説明するのか、明確にすることを目指した。 特に上記第二の点に関連して、昨年12月、グライス研究、アリストテレス研究、合理性と規範性をめぐる研究に詳しい、オックスフォード大学のデイヴィド・チャールズ教授と意見交換する機会を得て、最近の合理性をめぐる議論の動向、及びアクラシアに関する教授自身の見解をめぐって、実りある議論をすることができた。また、今後の合理性とアクラシアの理解に関する研究協力の進め方についても、有意義な話し合いができた。 本年3月には、グライス研究、そして自然主義と反自然主義をめぐる議論に関する研究について、慶應大学の飯田隆教授と意見交換するとともに、今後の研究協力について話し合った。
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Research Products
(1 results)