2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520022
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 教授 (50117339)
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Keywords | 不合理 / 価値 / 目的 / 行為 / アリストテレス / グライス / 構成主義 / 反自然主義 |
Research Abstract |
本研究は、意志の弱さを含む人間の不合理性と愚かさについて、感情と欲求、目的と価値、合理性と規範性という、人間の行為をめぐる基本的な問題と関連させて、哲学的視点からだけでなく、社会学的、精神医学的、脳神経学的視点からも広く受け入れられるような、一般的・総合的な説明を与えることを目指すものである。 最終年度に当たる当年度は、現代における行為論の主流をなすドナルド・デイヴィドソンの考え方に対して明確に批判的な、ポール・グライスの行為論について更に理解を深めるとともに、グライスが主張する合理性と規範性に関する反自然主義的な構成主義と、価値に関する実在論の両立可能性について、より明確にすることを目指した。また、合理性と規範性をめぐる近年の議論の整理を進めると同時に、合理性と規範性に反すると考えられる意志の弱さというごくありふれた現象を、構成主義の立場からどのように説明できるのか、その点を明確にすることを目指した。 研究成果のとりまとめに関しては、作年11月に福岡大学で開催された、福岡・熊本を中心とする研究者グループとの、行為論と価値論に関する合同研究会(その後、学会を名乗ることになった)において、提題者として、「行為と出来事-P・グライスの戦略-」と題する口頭発表を行なった。その後、当日の発表原稿に手を加えて、論文として公表した。また、「人間の生の目的と成熟の概念」と題する別の論文を、本年4月刊行の論文集『医療の本質と変容』に寄稿した。 研究代表者はこれまで、約7年の間、グライス研究会を主催してきたが、今回その成果を、本研究の成果と合わせて、グライス晩年の講義録を翻訳出版するという形で公表することにした。出版社に約束した理性論・価値論・行為論の翻訳は、そのかなりの部分が、本年3月末までに、既に完了している。来年秋には刊行される予定である。
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