2008 Fiscal Year Annual Research Report
ハンガリーの思想家ルカーチと日本人たちの往復書簡の諸相
Project/Area Number |
20520068
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
丸山 珪一 Kanazawa University, 名誉教授 (50019262)
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Keywords | ルカーチ / ハンガリー / 日本近代 / 翻訳 / 書簡 / 受容史 / 思想 / 文学論 |
Research Abstract |
私のプロジェクトは、ハンガリーの思想家ルカーチと日本人たちの間の往復書簡を分析し、その背景と同時代的関連を調べ、ルカーチの受容や日本の思想史・文化史にとっての意義をあきらかにするところにある。初年度のこの一年の仕事は、何よりもまず書簡のテキストそのものを入手することから始まり、ついですべて英文と独文であるそれらのテキストを翻訳しながら私のパソコンへ取り込んだ。またルカーチ・アルヒーフでは保管されているルカーチの書簡全体についておおよそを聞くことができた。まずここまでが第一段階で、三年間のプロジェクトの出発点となる全体の基礎を据えたと言うことができる。 書簡の分析は三つの面をもっていて、(1)ルカーチ自身の人と思想の全体、とくに書簡の折々にどんな状態にあるかを知ること、(2)書簡の相手の日本人(35人ほど)について調査をおこなうこと、(3)これら二つを前提に、書簡が何を問題としているかを明確にすること、である。どれもが無限に広がっていくが、とりあえず分かりそうなものから手当たり次第に調べていくという方針で、今年は二度東京へ足を運び、国会図書館やいくつかの大学図書館で仕事をした。分かった事柄は、註の形でパソコンに取り込んだ。 今年のもうひとつ大きな仕事は、「ルカーチ研究通信」の発行である。息長く続けるつもりだが、年度末に思いつき、創刊号を出した(16ページ、100部)。これまでの仕事の蓄積やルカーチの資料について紹介しつつ、逆に協力も得ようという双方向のものになることを企図している。中身はルカーチ全般を扱うが、毎号継続してこのプロジェクトについての記事や資料を知らせていくことにしている。
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