2010 Fiscal Year Annual Research Report
ハンガリーの思想家ルカーチと日本人たちの往復書簡の諸相
Project/Area Number |
20520068
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
丸山 珪一 金沢大学, 名誉教授 (50019262)
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Keywords | ルカーチ / ハンガリー / 日本近代 / 翻訳 / 書簡 / 受容史 / 思想 / 文学論 |
Research Abstract |
私の課題は、ハンガリーの思想家ジェルジ・ルカーチと日本人たちの往復書簡(すべて戦後のもので、180通ほど)を研究・分析し、その背景と同時代的関連を調べて、それらを書簡の註に生かし、そこから浮かび上がってくるさまざまな問題を取り出し、解明することにあり、今年度は3年計画の最終年に当る。 昨年度までに済ませていたことは、往復書簡テキストを入手することから始め、それを翻訳し、要旨を掴み、相互の関係を明らかにすること、できるところから手をつけて書簡に註をつけて行くこと、「ルカーチ邦訳リスト」を作成すること等が主であった。 今年度の仕事の中心は、それぞれの書簡の細部に立ち入って、不明な事項や書簡の相互関係を明らかにするための簡潔で正確な註を工夫することで、そのために(1)それぞれの時点でルカーチがどんな仕事をし、どんな状態にあったか、(2)相手の日本人がどんな人か、ルカーチとどんなふうに関わっているか、(3)書簡に窺われる日本やハンガリーの出来事、社会状態がどういうものであったか、に留意しながら、国内外の図書館で念を入れて調査した。これは利用しやすいように小冊子としてまとめた。ちょうどルカーチ・アルヒーフでも膨大な全書簡をデジタル化し研究するプロジェクトが進行中で、私のささやかな仕事も何ほどか寄与しうるであろう。 書簡の直接的な仕事と並行して、日本におけるルカーチ受容史の材料もかなり収集したが、まだその広さと深さにおいて全貌を展望するには遠く、これからの仕事である。
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