2008 Fiscal Year Annual Research Report
女性による日記・書簡文学と公的領域形成-比較文学的視点を交えて-
Project/Area Number |
20520173
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
吉野 瑞恵 Surugadai University, 現代文化学部, 教授 (00224121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 聡子 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (70224871)
松井 優子 駿河台大学, 現代文化学部, 教授 (70265445)
増田 久美子 駿河台大学, 現代文化学部, 准教授 (80337617)
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Keywords | 日本文学 / 比較文学 / 日記文学 / 書簡文学 / 公的領域 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、古代から近代に至る日本の女性作家による日記・書簡文学の持つ「公的」な性格に着目し、女性が「書く」ことと、公的領域の形成・拡大との関わりを、英語圏文学研究で近年注目されているlife-writingという概念を援用しながら、英米その他の女性作家の日記・書簡文学との比較も交えて明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず研究協力者に資料収集を依頼して、life-writingという概念が英語圏文学研究においてどのように理解されているのかを確認した。その結果、この概念が広範に用いられて、いまだ共通理解に至っていないことが明らかになった。また、2回の研究会では、研究協力者による18世紀英国女性の自伝に関する研究発表、韓国から招聘した研究者による前近代の韓国女性の自伝についての研究発表がなされた。これらの発表を通じて、どちらも明確に読者を意識したものであることが指摘され、自伝を書くという女性の行為が公的領域形成と密接な関わりを持っていたことが明らかになった。 以上のような成果をふまえつつ、日本文学の分野においては、主として中世の女性の自伝である『とはずがたり』を研究対象とし、この作品の中では和歌という手段を通して公的領域に参入しようとする女性の姿が描かれていることを明らかにした。
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