2009 Fiscal Year Annual Research Report
ホテル表象にみる、社会の近代化とイギリス文学の係り-大戦間期を対象に-
Project/Area Number |
20520246
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宗内 綾子 東京理科大学, 理工学部・教養, 講師 (70385532)
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Keywords | 英米文学 / 近代社会 / ホテル |
Research Abstract |
本研究二年目にあたる本年は、昨年度に引き続き一次資料の収集・分析を行うとともに、Noel Cowardのホテル表象をより仔細に考察した。とりわけ、Semi-MondeとPrivate Livesにおける対照的なホテル表象に注目し、これら二作品を通してCowardが、近代における流動的な生のあり方を描く舞台形式を模索した様子を探った。 その際、両作品におけるホテル表象を、オーストリア作家Vicki Baumによる国際的ベストセラー小説Grand Hotel、その舞台化作品、およびハリウッド映画化作品におけるホテル表象と比較対照し、演劇という「旧」メディアにおいて「近代」を描く際にCowardが直面した困難こそが、近代における流動的なアイデンティティの在り方そのものを劇作法に構造化した彼の代表作、Private Livesの創作へとつながったことを提示した。 資料に関しては、特に、駅ホテルの広まりとその凋落、またそれをもたらした旅行手段の変遷に関するものを精力的に収集した。その分析を通して、Cowardの二作品に加えて、本研究のもう一つの柱であり、Cowardの両作品と人物やモチーフの点で多くの共通項を持つHenry GreenのParty Goingを、より精密な歴史的文脈から理解することが可能となった。とくに後者に関しては、作品終結部の新たな解釈、ひいては作品全体の再定義を可能とする重要な視点を得ることができ、次年度の研究に向けての課題と方向性を、より具体的に認識することが可能となった。
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Research Products
(1 results)