2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520315
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西上 勝 Yamagata University, 人文学部, 教授 (10189277)
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Keywords | 中国文学 |
Research Abstract |
本研究は、本来は「はしがき」の役割を担うに過ぎない「題跋」と呼ばれる中国の散文ジャンルが、その文学性を獲得していく過程を明らかにすることを目的とする。 平成20年度においては、明末の蔵書家・毛晋が編集した叢書『津逮秘書』に集めた宋代作家の手になる題跋を基礎的資料として、その文学的特徴をとらえることを目指した。 毛晋が集録した二十家の作の中でも、後世、特に明末において題跋ジャンルの創始者と評価されるようになったのは、蘇軾と黄庭堅のいわゆる蘇黄二家であり、「小品文」の模範作として各種の選集が編纂された。そこで、蘇黄題跋と先行する諸作家の手になる題跋とを対照させつつ、主として絵画作品を対象として書かれた蘇軾と黄庭堅の題跋に注目してみることにした。 蘇黄以前においては、詩文や書帖に比べ絵画は、芸術的な評価が十全に表明されていなかったからである。絵画作品を目前にして、どのような散文形式による評価がまず行われたのかを知ろうとするとき、題跋は貴重な手がかりを与えてくれる。このような意図に基づいて、蘇黄の題画跋に焦点を定め当その文学的特徴を考究し、論文「蘇黄題画跋と画人伝の成立」をまとめた(岡山大学『中国文史論叢』第5号掲載)。 平成21年度においては、このような成果を踏まえ、題跋とその創作の起因をなした対象物との関係に、さらに注目しながら、蘇黄の影響を受けて題跋の制作を試みた作者たちの作品を、書論及び画論に関わる文献の集積を視野に収めつつ、評価分析を進めていく方針である。
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Research Products
(1 results)