2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520315
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西上 勝 Yamagata University, 人文学部, 教授 (10189277)
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Keywords | 中国文学 |
Research Abstract |
本研究の初年度にあたる平成20年度では、明代の毛晉が集録した「宋人題跋」の中で初期の中心的位置を占める蘇軾と黄庭堅の題跋作品から、絵画作品を対象とするテキスト群を主たる対象として選び出し、そこから読み取ることができる新しい画家像を提示した。 二年目の平成21年度においては、昨年度のこうした成果を踏まえ、題跋とその著述の契機となった対象物との関連を、関係する画論及び詩や序記作品をも視野に入れつつ、より具体的に分析検討を進める計画によって研究を進めた。 その計画のもと、水墨による竹をテーマとした絵画すなわち墨竹を対象として書かれた題跋をまず選び、竹について文学的伝統にも配慮をしつつ分析を試みた。竹は中国の知識人にとって、古くから豊かなイメージを蓄積させてきた外界物であったが、知識人の文房生活に不可欠な筆墨によって表象されるようになったことの意義が、蘇軾と黄庭堅によって題跋が活用されることを通じて表現され、言語表現の新しい領域が切り開かれ継承されていく過程を、具体的に追求し「墨竹と文学」と題する論文にまとめることができた。 さらに、そうした過程を経て確立された「墨竹」の意義に基づいて、宮廷に蓄積されてきた絵画コレクションが整序され、すでに存立していた人物や花鳥といった絵画ジャンルと肩を並べるようになることを、12世紀頃にまとめられた宮廷秘府所蔵絵画を集録した書である『宣和画譜』から、具体的に確認することもできた。 このように今年度の研究成果によって、題跋が絵画観にもたらした画期的な意義、及び伝統として継承されることになる含意について、これまでとはことなる新たな観点からの見方を世に問うことができた。
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Research Products
(2 results)