2012 Fiscal Year Annual Research Report
国家変容と言語問題のモデル的研究:ハンガリー語のケース
Project/Area Number |
20520326
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 真理 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (10283839)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2013-03-31
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Keywords | ハンガリー語 / ハンガリー文学 / 近代ヨーロッパ / 民族語運動 / 文学運動 |
Research Abstract |
本研究の最終年度の課題として、国家変容と民族言語運動のあり方について、近代ハプスブルク帝国のハンガリーの問題を中心に、19世紀全般にわたって通時的観点から検証した。その際、民族言語の復興運動と国民文学確立に向けての運動の両面を扱い、「民衆」の概念を導入して通時的変化をとらえなおすことを試みた。 国民文学創造の試みにおける歴史性と民衆性について,当時始まった民族語による演劇運動の展開と具体的な作品群を検証することを通して検討した。市民社会の成長により、かつて貴族層に限られていた文化の受け手が,やがて市民層へとシフトしていったが、この社会変化に連動して文学上のテーマは王侯貴族の歴史から農民の日常へと次第に関心が移り変わっていった。そのスタイルは悲劇より喜劇、文語より口語、韻文より散文が好まれた。また同時に、踊りや歌をふんだんに挿入した「民衆もの」とよばれるジャンルが確立したのも、市民社会の成長と民族主義の高まりが頂点に達した1840年代であった。 近代初期において、都市の市民らは牧歌的な農村や純粋無垢な農民をイメージし,いつしか農民は市民社会とナショナリズムが生んだ無邪気な「理想の民族像」へと変貌していった。しかし、そのロマン主義的「民衆」像は、近代後半にはリアリズムの広がりにより否定され衰退していくなど、「農民」や「民衆」概念がもつ役割は社会変化とともに推移したことが検証できた。 これらの研究成果は、学会発表「近代ハンガリーの民族語運動と劇場-1830~40年代の国民劇場」(日本ウラル学会第39回研究大会)および論文「王たちから農民へ-ハンガリー国民文学運動のなかのヒーローたち-」『ヨーロッパ・ことばと文化-新たな視座から考える(仮)』(大阪大学出版会)などにまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)