2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本現存『白氏文集』那波本諸本の調査収集と諸本の比較研究
Project/Area Number |
20520329
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
下定 雅弘 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (00157588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神鷹 徳治 明治大学, 文学部, 教授 (00233940)
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Keywords | 那波本白氏文集 / 朝鮮版白氏文集 / 天理図書館 / 宮内庁書陵部 / 早稲田大学図書館 |
Research Abstract |
本研究は、江戸時代、元和4年(1618)、那波道図により刊行された「白氏文集」那波本の現存するものを調査収集し、読本の本文・書き入けなどの状態を比較研究した上で、書誌的に見て、最善の那波本を影印刊行することで、白居易研究の便宜を高め、白居易研究の発展に寄与することが目的だった。そのための基礎作業は、平成21年度までにほぼ終え、(1)那波本重要読本をほぼ全て実見調査し、(2)諸本の比較検討を行い、影印刊行する善本の候補を三本にしぼりこんだ。その第一本は、米沢市立図書館現蔵の本、第二本は天理図書館蔵本。第三本は、宮内庁書陵部現蔵の角倉素庵旧蔵本である。第一本、米沢本は書き入れや虫損がほとんど無く初印本中の善本である。ただし、書き入れが無い。第二本は、天理図書館蔵本。これは九条家蔵の素性のよい本で書きこみがない。第三本は、宮内庁本蔵本。特微は角倉素庵が、京都の識者による旧鈔本「白氏文集」との校異の情報を全巻に書き入れている点にある。この中には現在失われている旧鈔本もあるので、これ自身貴重な旧鈔本本文である。最終年度である22年度には、この三本を種々の面から検討し、影印本として何れを採用するか決定することが課題だった。22年度には、那波本「白氏文集」諸本とともに、那波本の底本といわれている朝鮮本諸本の調査も行った。とりわけ、下定と神鷹の2名で天理図書館所蔵の那波本と朝鮮本の書誌的調査を行ったのは影印すべき最善の本を決定する上で極めて重要だった。天理図書館所蔵の那波本は、九条家旧蔵本と云われているので、書き入れ等を期待したのであるが、全くなかった。かつ、全体として補修がしてあるものの、虫損が多く、テキストとしては良好なものではないと判断された。また本年度には、新たに甲稲田大学図書館に那波本が1本あることを確認し、同大学がインターネット上で公開している「古典籍総合データベース」で全容を確認することができた。早稲田大学図書館所蔵那波本は、旧鈔本の本文による書き入れはあるものの、巻3・4の新楽府のみで、巻12の長恨歌等には全く書き入れはなかった。改めて旧鈔本との校異の結果を全面的に書きこんでいる宮内庁所蔵の那波本が、そのテキストの精美さとともに、書誌的見地からして最も優れているのを確認することができた。最後に、本研究の成果を公開するために応募していた、平成23年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)「宮内庁所蔵那波本「白氏文集」」に内定したので、付記する。
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Research Products
(4 results)