2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520340
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 貴美子 Waseda University, 文学学術院, 准教授 (20386569)
|
Keywords | 文献学 / 漢籍 / 佚文 / 注釈 / 日中古典学 |
Research Abstract |
本研究は、日本の学術・文化の形成の様相を、中国の学術・文化、特に漢籍の受容と、その日本における変容という面から捉えようとするものである。具体的には、奈良末・平安初期の興福寺僧善珠が撰述した仏典注釈書における漢籍からの引用部分を整理し、そこに存する佚文を輯集するとともに、日本、そして東アジアに共有された漢字漢文文化の展開を明らかにするための新たな手がかりを築くことを目指している。 今年度は、善珠撰述書のうち、『成唯識論述記序釈』等における漢籍引用文の問題を検討し、データを整理した。また、特に具平親王撰『弘決外典鈔』における漢籍引用についで調査研究を進め、8〜10世紀にかけての日本の学問の水準と、その推移展開の過程を総体的に捉えるための基礎作業を進めた。具体的には、『弘決外典鈔』身延文庫所蔵本等を実見調査し、関連資料を収集して、漢籍との関係について詳密な調査を行った。『弘決外典鈔』(991年成立)は、日本が仮名による表記法を獲得していく時代に、従来の漢字、漢文による学問がいかに行われていたかを伝えるものである。そしてそれは、それ以前の、漢字のみを表記に使用していた善珠の時代の学問について考察する際、有効な比較対象の材料となる。つまり、『弘決外典鈔』に数多く含まれる漢籍佚文資料を、善珠の著作における漢籍引用箇所と相互補完的に捉え研究することにより、それぞれがもつ重要な文化史的意義を一層明らかにできるものと考え、現在その一条一条についての検討を進めているところである。 また、以上の中心テーマに関連して、渤海使との交流や、孝子伝テキストの伝来など、奈良・平安期を中心とする漢字漢文文化の問題を多面的に検討し、論文や国際学会にて成果を発表した。
|
Research Products
(5 results)