2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520340
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 貴美子 Waseda University, 文学学術院, 准教授 (20386569)
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Keywords | 文献学 / 漢籍 / 佚文 / 注釈 / 日中古典学 |
Research Abstract |
本研究は、日本の学術・文化がこれまでいかにして形成され、また今後いかなる方向へ進むべきかを、中国の学術・文化の受容、またその日本における変容という面から捉えようとするものである。具体的には、主として奈良末・平安初期の興福寺僧善珠の撰述した仏典注釈書における漢籍からの引用文、佚文を整理検討し、その作業を通して漢字文化を共有する日本や中国、ひいては東アジア地域全体のことばや文化の特質と意義を追究解明することを目的としている。 2009年度は派遣交換研究員として北京大学中国語言文学系に滞在した。そこでその環境を最大限に生かし、北京大学図書館、中国国家図書館、中国科学院図書館などが蔵する関連資料を発掘活用すると同時に、北京大学中国語言文学系古典文献専攻の教員をはじめとする中国学研究者と学術交流を密に重ね、また、中国あるいはアメリカ、オーストラリア等で開催された中国典籍や東アジア文化に関する国際学会に積極的に参加し、研究成果を発表した。 今年度は、善珠撰『成唯識論述記序釈』と『因明論疏明灯抄』の本文整理と漢籍引用文中の佚文、異文の抽出、検討を行うとともに、善珠以後、平安中期にかけての日本の学問の水準と、その推移展開の過程を総体的に捉えるための材料として、宇多天皇『周易抄』や具平親王『弘決外典鈔』における漢籍読解の方法や漢籍引用文について研究を進めた。また、如上の中心テーマに関連して、白居易詩や孝子説話の受容の問題や、中国における中国古典文献研究と日本の学術界との関わり等についても資料を収集し、研究発表を行った。今年度は特に、中国において口頭発表や論文発表の機会を多く持つことができ、その中で日本伝存典籍が有する特質と意義について多面的複眼的な視野を得ることができたのは大きな収穫であった。
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Research Products
(14 results)