2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520340
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 貴美子 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (20386569)
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Keywords | 文献学 / 漢籍 / 佚文 / 注釈 / 日中古典学 |
Research Abstract |
本研究は、日本に伝存する典籍における漢籍佚文の輯集と研究を通じて、中国の学術・文化がいかに受容されたのか、その具体相を明らかにすることを目指したものである。近年、国内外の学界において、漢文や漢学、また日本伝存典籍に対する関心が高まりを見せている。また漢文訓読など、文化の基であることばの問題についても新たな知見が提出されているほか、漢文文化圏における古代文化や文学の形成を東アジア全体からの視点で捉え直そうとする動きも活発である。 本研究は、関連分野研究の進展に資するべく、従来十分な検討がなされてはこなかった古代日本の仏典注釈書を中心とする著作にみえる漢籍からの引用文、特に佚文の輯集に敢り組んだものである。具体的には、奈良末平安初期の興福寺僧善珠が撰述した仏典注釈書について、写本等の調査成果に基づき本文を校勘し、佚文あるいは異文を抽出し、それらの資料が有する学術史的、文化史的意義を詳しく検証するとともに、善珠以後、平安中後期から中世にかけての仏典等の注釈書も視野に入れ、そこにみられる漢文読解の方法や漢籍からの引用文についても合わせて検討し、古代日本の学問の様相と、その推移展開の過程を総体的に捉えていくことを目指した。 四年間の研究期間を通して、善珠撰『成唯識論述記序釈』や『囚明論疏明灯抄』における漢籍佚文の研究考察を主とし、また、『弘決外典鈔』や『三教指帰』、『源氏物語』等の注釈書における漢籍引用についても検討を行い、「漢」文化の複雑多様な伝播の様相と、日本の学術・文化の形成と展開に関わる基礎データを整理することができた。また、その成果を国際学会で.発表するとともに、国内外の雑誌や刊行物に論文として公表した。今回行った各資料の整理、分析は、日本のみならず、漢字文化を共有する東アジア地域全体のことばや文化の問題を今後体系約総体的に追求していくための基盤となるものである。
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