Research Abstract |
本研究は,中国語母語話者と韓国語母語話者の日本語学習者を対象として,まず語彙と文法の知識のどちらが共起表現の習得に強く影響しているかを明らかにした上で,共起表現の理解が総合的な言語理解(聴解と読解)にどのくらい貢献するかを明らかにすることが目的であった。共起表現として,本研究では慣用句とオノマトペの二種類に焦点を置くこととした。慣用句に使われている名詞は,すべて日本語能力試験2級から4級までに配当されているものに限定し,本研究の被験者にとって馴染みのある単語を選んだ。したがって,慣用句を構成する個々の単語の意味は理解できるが,それらが共起して生じたときの意味を知らなければ,正しく回答することはできない課題を設けた。これらの慣用句とともに,日本語学習者の総合的な日本語能力(語彙・文法・読解)を測定するテストを作成し,これを中国の西安外国語大学で日本語を専攻とする学生(3年生と4年生)に対して実施した。このデータについて,構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling : SEM)の手法によって分析した。 その結果,慣用句には語彙知識の影響が認められた。それに対してオノマトペは語彙とは直接の影響は見られず,慣用句の影響が見られた。つまり,語彙→慣用句→オノマトペという順序での影響関係が見出された。この成果は,研究代表者が主催となってワークショップを実施し,構造方程式モデリング(SEM)の手法・知見を日本語教育関係者および日本語学習者と共有した。また,一連の研究成果を,日本語教育学会,第二言語習得研究会,日本言語科学会等で発表した。さらに,日本語学習者による共起表現の習得状況を明らかにするための基準として実施した日本語母語話者における共起表現の使用状況についての調査結果は,論文にまとめ日本言語学会の学術誌である『言語研究』に採択された。
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