2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス第二帝制の万博政策と地域権力に関する基礎研究
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20520630
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 啓介 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (00305103)
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Keywords | ナポレオン3世 / パリ万博 / ボルドー / ワイン / 地域権力 |
Research Abstract |
本研究は,フランス第二帝制の統治論理をよく反映すると考えられるパリ万国博覧会に着目し,そこにみる理念と組織化〔万博政策〕を考察の場として,すぐれて「ワインの街」という個性を強化したボルドーの地域権力にアプローチする事例研究である。 平成23年度においては,前年度までの研究をさらに深化させるべく,1855年パリ万博におけるワイン出品に関する利害状況のありかたを中心に分析することにより,ボルドーの地域権力による万博への対応を探った。より具体的には,主として万博政策にかかわるジロンド県会,ボルドー市会等の議事録や,それら組織の構成員に関する史料を収集・分析するとともに,ジロンド県万博委員会議事録にみられる出品物選定をめぐる議論や,当該委員会委員長でもあったボルドー市長A.ゴティエの日記にみる関連記述の分析を進めた。これらは,ボルドーワインの1855年格付制定につらなる万博出品プロセスでもあり,ワインそのものの商業的論理にしか注目しない従来のマーカム(Markham)説を,地域権力のありかたに即して批判的に検討するものであり,その成果の一部は論文として公表した。他方,商業会議所を中心とする商事裁判所,県会,市会など地方機関を横断する人的ネットワーク,およびそれらとワイン業利害との関係についての分析は,現在着手しているところであり,今後の研究総括において考察を深め公表する予定である。 なお,前年度において,今後の着目点として注目した植民地産砂糖とワイン業の歴史的関係性については,ワイン醸造の側面についての深い経済史的分析が不可欠であり,政治史的・社会史的な課題を中心とする本研究にとって,今後の研究課題として残される。
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Research Products
(1 results)