2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520675
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
小池 伸彦 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 企画調整部, 企画調整室長 (90205302)
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Keywords | 考古学 / 歴史考古学 / 冶金考古学 / 古代 / 鉛 / 官営工房 |
Research Abstract |
平城宮東方基幹排氷路SD2700出土冶金関連遺物について再検討を行った。今年度は主としで平城宮第172次調査出土の冶金関連遺物を対象として分析を進め、いかなる業種の冶金関連工房が存在したかを追究した。冶金関連遺物出土状況を分析した結果、これらの冶金関連遺物は多くが西隣の第70次調査で検出した工房と関連する可能性が高いことが判明した。 これらの冶金関連遺物には鉄塊等の鉄関連遺物、熔結銅等の銅関連遺物、鉛関連遺物、炉壁類、坩堝等の土製品、焼礫等、その他の遺物がある。これら冶金関連遺物の詳細な分類と自然科学的分析結果から、8世紀中頃から後半にかけて、内裏・第二次大極殿院東外郭南半東方の一画において、鉄鍛錬鍛冶、鋳鉄、鋳銅、鉛銅合金加工、銅精製ないし精錬に関わる作業が行われたと推定された。ここには複数業種の冶金工房が存在していたと考えられ、ほかに冶金と冶金以外の漆工との複合冶金工房の可能性もある。また、僅かながら玉作を伴う可能性も認められた。 今回新たに湾曲羽口の存在を確認し、平城宮内の工房においても湾曲羽口が使用されていたことが実証できた。従来の研究ではその使用は認められてこなかったが、本研究により、8世紀後半に平城宮内で使用されていたことが明らかとなった。湾曲羽口は7世紀後半の一大官営工房である飛鳥池工房でも使用されており、官営工房における同一技術の継続性を想定できる大きな成果が得られた。
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