2009 Fiscal Year Annual Research Report
狩猟採集社会の定住・移動性と集団の空間的流動性に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
20520676
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
遠藤 匡俊 Iwate University, 教育学部, 教授 (20183022)
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Keywords | 歴史地理学 / アイヌ / 蝦夷地 / 狩猟採集民 / 集団の流動性 / 定住期間 / 血縁親族関係 |
Research Abstract |
これまで狩猟採集民の社会は平等な社会であるとされてきたが,居住集団の分裂と空間占拠の平等性の関係はまだ明らかにされていない。本研究では,集団の空間的流動性が生じていた1856-1869年の東蝦夷地三石場所のアイヌを対象として,両者の関係を分析した。集落が分裂しなかった場合には,定住したか移動したかには関わりなく居住者間における空間占拠の平等性は高いと考えられる。同様に,集落が分裂した場合であっても,複数の土地へ別々にすべての家が移動すれば空間占拠の平等性は高い。しかし,集落が分裂した場合に,一部の家が他へ移動し残りの家がそのまま定住した場合には空間占拠の平等性は低いと考えられる。 分析の結果,分裂した21集落を対象とすると,存続期間の短い集落では居住者間の空間占拠の平等性は高く,存続期間が長い集落では空間占拠の平等性は低かった。分裂の有無に関わらず55集落すべてを対象としても,集落の存続期間が長くなるほど空間占拠の不平等性は高まる傾向があった。また,集落の分裂時に空間占拠の不平等性が高い集落においては,必ずしも役職者の家がそのまま異動せず定住するような傾向は特になかった。常に不平等な空間占拠が生じ続けた集落にそのままずっと居住し,最も強く空間を占拠していたのは必ずしも役職者の家ではなかった。
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