2008 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会における老年世代の生きがいと技能の継承をめぐる民俗学的研究
Project/Area Number |
20520720
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
関沢 まゆみ National Museum of Japanese History, 研究部, 准教授 (00311134)
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Keywords | 老年世代 / 技能の継承 / 高度経済成長 / 神社祭祀 / 農業の変化 / 圃場整備 / 鳥羽市神島 / 栃木県芳賀郡市貝町 |
Research Abstract |
本課題に関連して、第一に、三重県鳥羽市神島における生活変化と老年世代の役割についての調査を行なった。神島は、2008年現在高齢化率40%で高齢化が進行している島である。『専修大学地理学研究会紀要』5(専修大学地理学研究会1958年)に報告されている昭和33年当時の神島の生活と高度経済成長後の神島の生活との比較を行ない、漁港の整備と連絡船の運航や電気・水道・ガスの普及、などによって日常生活が便利になった一方、若年世代の島外流出などの問題をかかえながら、1960年代・70年代を経て島の生活が大きく変わった。しかし、その一方で、宮持や隠居衆と呼ばれる島の神社祭祀などを行なう長老衆の組織やその役割は維持、継承されていることが確認された。一方、女性の海女の技能の継承と家事労働の変化についてなどの調査が課題として残された。第二に、栃木県芳賀郡市貝町の専業農家への1960年代以降の農業の変化についての調査を重点的に行なった。そのなかで、この市貝町では北部から南部にかけて現在大規模圃場整備事業が行なわれており、その完工に向けては換地等々の困難な問題を抱えているが、現在70歳代の世代が交渉にあたり利害の調整役となっている。その土地の交渉の仕方には、この農業に従事してきた70歳代の人物ならではの老練の技術があることが明らかになった。このことは交渉の方法にも世代による相違があることを示唆していると思われ、老年世代の技能の一つとしてさらに調査と分析を継続していく必要がある。第三に、日本社会における老年世代の役割と意義についての既発表論文の英訳にとりかかった。
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Research Products
(1 results)