Research Abstract |
本研究は,フランス法における法源論の現代的変容に関する総合的な研究を目的とするが,直接には,判例変更の遡及効との関係での時間的適用範囲の問題,および,執行府への委任立法による法典化の問題に中心をおく。 2か年度を終了したこの時点において,前者,即ち,判例変更の時間的適用範囲の問題に関しては,演習の機会をとらえるなどして,かなりのエネルギーを割き,問題の状況を概略把握することができた。但し,本当の問題は,この技術的レヴェルを超えて,法律中心主義そのものにあり,それゆえに,判例は法律の適用にすぎないから,判例変更の場合にも法律は当初から判例変更後のような意味であったことになるという前提そのものに関して,文献にもほとんど議論がないため,得心のいく説明が得られず,疑問が残り続けている。 上記の問題に関して思いの外時間を費やしてしまったため,第二年度に予定していた,後者の,委任立法による法典化の問題に関しては,実質的な検討に入ることはほとんどできなかった。 その代わり,2008年の憲法改正によって,違憲立法審査に関するいわゆる事後審査が導入されたこととの関係で,想定外の大きな問題が生ずることとなった。即ち,この事後審査は,当初は,違憲の訴えの提訴権を訴訟当事者にも拡張するという量的な変化にとどまるものとうけとめられていたのに対して,現実には,真の意味の憲法訴訟に相当するような実質を有する手続的具体化が施されるに至って,フランスにおける法源秩序の中での憲法の位置づけに大きな質的変容がもたらされ得る状況が生じ,この想定外の新たな問題に関しては,第二年度の研究のかなりの部分を割くこととなった。 最終年度は,判例変更問題のとりまとめのほか,場合により,この違憲審査問題に,主要課題としての位置づけをシフトさせることも検討している。
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