2008 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアとフィリピンにおける原発政策過程と市民社会
Project/Area Number |
20530115
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 信人 Keio University, 法学部, 教授 (50265922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 裕 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (40213623)
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Keywords | 原発政策 / 反原発運動 / 市民社会 / インドネシア / フィリピン / 日本 / 比較政治社会学 |
Research Abstract |
初年度の調査では、日本とインドネシアの原子力発電所建設をめぐる推進派と反対派の対立という原発政策過程の経緯と構造を検証し、市民社会の比較政治社会学的分析を試みた。 原発を争点とする社会紛争は、両国で異なる様相をもってあらわれた。市民運動、NGOの動向にも差異がみられた。調査の結果、一部の国際NGOの活動を除けば、市民社会レベルでの反原発国際ネットワークは未構築という事実が判明した。原発保有国である日本のNGOに典型的であるが、自国の原発問題に集中する傾向が強い。原発推進の政府間協力は活性化しているものの、反原発の市民社会による越境的なネットワーク化は立ち遅れている。 日本については、(1)国内の世論動向、(2)原発関連施設の安心・安全をめぐる社会的認識、(3)再処理事業をめぐる社会紛争の動向に関して検討を加えた。明らかになったことは、(1)世界有数の原発大国である日本では、国内世論の多数派が「現状容認・新規建設反対」という国際的にも際立った特徴を示している点、(2)原子力政策全体の方向性を賭けた推進派対脱原発派の対立という段階を超えて、個別施設の具体的な問題点に関する論争としての性格を強めている事実である。 インドネシアの原子力発電建設計画をめぐる政策過程については、原子力庁が公開している資料を基に整理をした。背景には、(1)近い将来における石油・天然ガスの枯渇、(2)電力需要の上昇、(3)外国資本と技術の協力を前提としたエネルギー政策の転換があった。1997年の原発建設計画は同年後半に発生した通貨・金融危機によって頓挫した。2004年以降の原発計画再浮上の背景には、政情安定および経済力の回復があった。他方、市民社会の動向は、国際NGOや全国的組織をもつ環境NGOというよりは、原発建設予定地のNGO、イスラーム団体を中心にした住民の組織化が起こった。争点は原発の安全性にあり、それが政治化されることで地方政治が中央の政策に否を唱えるに至った。
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Research Products
(1 results)