2008 Fiscal Year Annual Research Report
欧州通貨統合の歴史的起源とフランスの通貨戦略(1968-79年)
Project/Area Number |
20530315
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Research Institution | Yokohama College of Commerce |
Principal Investigator |
権上 康男 Yokohama College of Commerce, 商学部, 教授 (30018006)
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Keywords | 欧州通貨統合 / 欧州経済統合 / 通貨統合 / フランス経済史 / フランス経済 / 新自由主義 |
Research Abstract |
フランスにおける現地史料調査(とくに大統領府文書および財務省文書の閲覧)、統計分析、および研究協力者たちとの討議をつうじて、次の3点を明らかにすることができた。 1、1968年から1970年代半ばまで、欧州共同体加盟諸国の関係は経済通貨同盟建設(通貨統合)問題をめぐって緊張していた。その最大の原因は、フランスがこの同盟建設に限定的にしか関与しよう,としなかったことにある。 2、フランスはインフレ基調の成長政策を継続する必要から、自国の通貨を強いドイツの国民通貨にリンクすることを嫌い、経済通貨同盟に慎重な姿勢をとった。一方、それにもかかわらずフランスがこの岡盟の建設に賛成したのは、欧州の結束を強化することによって超大国アメリカの「恣意」を封じ、世界固定相場制を維持するためであった。 3、1973年末の石油ショックとその後の世界経済の激変がフランスの姿勢を大きく変えた。変動相場制が一般化するなかで、フランスは1976年から、ドイツと同様の新自由主義的政策へと国内経済政策の転換を図る。また、それと相前後して、変動相場制を受け入れ、経済通貨同盟の建設にたいしても積極姿勢に転じる。これによって仏独協調の基盤が整い、安定通貨圏としてのEMS創設への展望が開けることになる。 以上の3点は本研究によって初めて確認されたものである。それらは、欧州通貨統合問題が国際通貨制度ならびに国内経済政策の歴史的転換と分かちがたく結びついていたことを物語っている。
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