2009 Fiscal Year Annual Research Report
欧州通貨統合の歴史的起源とフランスの通貨戦略(1968-79年)
Project/Area Number |
20530315
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Research Institution | Yokohama College of Commerce |
Principal Investigator |
権上 康男 Yokohama College of Commerce, 商学部, 教授 (30018006)
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Keywords | 欧州通貨統合 / 欧州経済統合 / 通貨統合 / フランス経済史 / フランス経済 / 新自由主義 / ケインズ主義 / 石油危機 |
Research Abstract |
1974年以後の、いわゆる「ユーロ・ペシミズム」期におけるフランスとドイツの対欧州政策の歴史的進化について新しい知見を得るとともに、通貨統合史の研究をいっそう深めることができた。これにはフランスにおける現地史料調査と研究協力者たちとの討議がきわめて有益であった。主要な成果は以下の点を明らかにできたことにある。 1、フランスの国内経済には、石油危機を契機に「対外的制約」が強く働くようになり、その結果、フランスはケインズ主義的成長政策との決別を余儀なくされ、ドイツと同様の新自由主義的安定政策を採用することになった。 2、ドイツは石油危機以後に欧州諸国が深刻な経済危機に見舞われたことから、それまでの制度改革を優先しつつ通貨統合を進めるべきだとする急進的な主張を改め、経済政策の協調に力点をおく現実主義に傾くことになった。一方、他の欧州諸国の提案するスネイク改革を頑なに拒否するドイツ(とりわけブンデスバンク)は孤立し、ベネルクス諸国との関係が緊張をはらむようになる。 3、こうした状況のなかで、それまでのフランス対ドイツおよびベネルクスという対立の構図が崩れ、仏独枢軸対イギリス、イタリア、アイルランドという新しい対立の構図が生まれる。この構図は共同体への通貨目標値の導入や、経済危機への対応の面に典型的にみとめられる。 以上の3点は本研究によって初めて確認されたものである。また、いずれも未開発のフランス大統領文書によって裏付けられている点に研究史上特別の意義がある。
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