2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530346
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
有村 貞則 山口大学, 経済学部, 教授 (40284236)
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Keywords | 障害者雇用政策 |
Research Abstract |
民間企業による障害者雇用は、その国の福祉制度や障害者雇用政策との関連性を抜きにして語ることはできない。特に日本企業の場合は、その傾向が非常に強いとこれまでの研究成果から感じた。そこで、本年度は、文献サーベイを中心に日本の障害者雇用政策の特徴や問題点等を国際比較の観点を踏まえなら考察することを試みた。 ディスアビリティ・スタディーズの主張、あるいはADA(アメリカ障害者法)における障害の定義に象徴されているように、現在では障害観の変革とともに障害を持つ人たちの範囲を拡大していくことが欧米先進諸国の主流となりつつある。しかし、日本の障害者雇用政策においては、いまだに障害の医療モデルにもとづいた限定的な障害者把握にとどまっているために、日本企業は、国際的にみるとより重度の障害者を雇用し続けなければならない状況に直面している。したがって障害者雇用率の数値だけを単純に国際比較して、その高低から日本企業の障害者雇用は遅れているなどと批判しても、まったく意味がなさないどころか、かえって障害者雇用推進の妨げとなるかもしれない。 今後、日本企業における障害者雇用を促進していくためには、トップ経営陣を中心とした民間企業の意識変革と積極的行動が必要不可欠であるが、それ以上に重要なのは、政府自身による障害者雇用政策や理念の根本的見直しであろう。これまで日本政府が実施してきた民間企業の障害者雇用義務化やその率のアップ、あるいは現在推し進められている雇用納付金の対象となる企業の拡大などは、障害を持つ人たちの生きる権利や雇用機会を保障するという社会的課題をたんに日本の政府が民間企業に押し付けているだけ、転嫁しているだけとも判断できなくはない。欧米諸国と同様に日本政府もこれまでの障害者雇用政策のあり方や理念を根底から見直す時期に到達していると思われる。
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