2009 Fiscal Year Annual Research Report
境界決定の自律性とワーク・ライフ・バランスへの組織的支援
Project/Area Number |
20530374
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森田 雅也 Kansai University, 社会学部, 教授 (40247896)
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Keywords | ワーク・ライフ・バランス / 自律性 / 境界決定の自律性 / 制度的支援 / 非制度的支援 / 男性の育児休業 |
Research Abstract |
平成21年度は、育児休業を取得した男性労働者への聞き取りやワーク・ライフ・バランス(WLB)に関する質問票調査を行うことを通じて、境界決定の自律性という概念の精緻化とともにワーク・ライフ・バランス(WLB)の経営学的な意義を明らかにすることに努めた。 育児休業を取得した男性は、上司や同僚、人事部門からの理解、協力、配慮といった非制度的支援を受けているのみならず、働き方に対して次のような意識を持っていることが明らかになった。長期間に渡る職業人生というスパンで現在の仕事を見ていること、長時間会社にいるよりも効率的な働き方を選好し結果を出すことで組織に貢献したいと考えていること、時間に制約のある働き方をしている人たちの苦労に気づき、彼(女)らにこれまで以上に配慮したいと考えていること等である。こうした考えを持つ男性が管理職に就くと、彼らが職場の働き方変える可能性があり、そこに男性が育休を取得することの意義が認められる。WLB質問票調査からは、育児休業や長期休暇等、WLBに関与する制度を利用している人たちは、自律的に行動している傾向があり、上司も部下の自己裁量を認めたり、部下の育成に努めたりしている傾向が認められた。調査対象企業ではWLBに関与する制度は既に設けられており、その利用に踏み切るには、上司による非制度的支援や、従業員に境界決定の自律性が与えられ、かつ本人が自ら踏み出しその自律性を発揮することが重要であることがわかった。 以上より、WLBを達成していくためには制度設計のみならず、非制度的支援の1つである上司の管理姿勢、自律的に行動できる人材の育成が必要であると考えられる。特に、労働者自身の行動を変えるような育成や管理のあり方なしではWLBを達成することは容易ではないと、現時点では結論づけられる。
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Research Products
(1 results)