2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530466
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
徳野 貞雄 熊本大学, 文学部, 教授 (40197877)
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Keywords | 過疎農山村 / 限界集落 / 他出子(者) / T型集落点検 / 世帯類型 / 生活農業論 / 都市農村交流 / 後継者 |
Research Abstract |
現代の日本は「家族」と「世帯」の概念が混同され、ぼやけている。日常の会話で「ご家族は何人ですか」と問われれば、田舎の親は「私ら年寄り夫婦二人だけです」と答え、マチの子どもは「妻と子どもの四人です」と答える。この認識は「世帯」であって「家族」ではない。これまで行政は住民台帳などで、同居している世帯員だけを家族として把握してきた。過疎地の集落の維持・再生および【継承】問題を考える場合、この他出者である別居世帯の家族と、その日常的なサポート関係を十分把握することが非常に重要である。 私たちが熊本県山都町で調べたところでは、他出者の14.6%が同じ町内に居住し、51.0%が熊本都市圏に住んでいた。実に、車だと一時間半以内で行き来できる場所に、三分の二の他出家族が居住しているのである。田植えや稲刈りなどの手伝いに行くなど日常的な交流もかなりあり、親の介護が必要になったとき「山都町に行って介護する」というものも他出子の50%にのぼる。農山村と都市に世帯が分離していても、車で一時間程度の距離ならば、相互にかなりの生活サポート機能を果たしている。田舎の親たちは口癖のように「子どもたちはみんな出ていってしまって」とぼやく。だがその実、比較的近場にいる他出家族は空間を超えて機能しているといえる。 以上のような事実をベースに、過疎農山村の集落における世帯の在り方と他出子を含めた家族の在り方を再検討し、家や集落の維持・存続(未来)に関する現代的実態とその性格特性を把握するための調査方法が「T型集落点検」である。この調査は、実家の親と都市部の他出子という世代間の継承や連続性の問題を扱うだけでなく、生活圏を軸に農村と都市の連続性(地域の実態と概念の変容)も視野に入れて調査している。
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