2008 Fiscal Year Annual Research Report
賃金制度の今日的展開-年功・職務・成果主義およびジェンダーをめぐる総合的研究
Project/Area Number |
20530479
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高橋 祐吉 Senshu University, 経済学部, 教授 (10072662)
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Keywords | 賃金制度 / 年功 / 職務 / 成果主義 / ジェンダー |
Research Abstract |
賃金制度の今日的展開における焦点である,年功賃金,職務給,成果主義賃金の動向を明らかにするために,国内外の文献の検討を行うとともに,労働組合からの聞き取りを行った。職務給が主流を占めるとされるアメリカにおいては,労働者の確保,モチヴェーションを高めるために,キャリアラダー・プログラムが積極的に導入される場合がある。キャリアラダーとは,日本における査定幅の小さな年功賃金と同様の賃金カーブを描こうとするものである点,示唆的であった。日本国内においては,成果主義賃金が導入されている場合は,制度が導入されていても従前の年功賃金と結果が変らぬように運用されているケースが多く見受けられ,そうでないケースでは,多くの場合に職場のチームワークの悪化等がもたらされている場合が多い。とりわけ,医療においては,チーム単位の労働が重視されるために,個々人のパフォーマンスを評価しようとする成果主義は多くの困難を抱えていると考えられる。また,成果主義賃金が導入されようとしても,労働組合がそれを防げ得た場合には,査定の少ない年功賃金のもつ平等的規範が労働者間に受容,支持されていることが強く推測された。さらにしばしば指摘される年功賃金のもつ性差別的性格は,歴史的には,女性に年功賃金が適用されなくなることによってもたらされたもので, ILOが1992年に100号条約の男女同一賃金かかわって日本政府に勧告したように,女性への年功賃金あるいはseniority creditsの適用により,ジェンダーフリーの年功賃金が実現可能であり,労働者の生活安定の面でも示唆的であると考えられた。
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